七変化
やっと戦いが終わった。
少し前まで私の家の冷凍庫がモロッコインゲンに支配されてた。冷凍庫を開けたら広がる緑。申し訳なさそうに隅に追いやられてる私の好きなアイス。
今まで見て見ぬふりしてたんだけど、いや、急に違う家の冷凍庫にテレポーテーションしちゃったりしないかなとか期待してたってのもあるんだけど、一向に幅をきかしたままなわけ。
このままだとうちの冷凍庫の中の居心地が良すぎて繁殖とかはじめちゃったりするんじゃないかと一抹の不安を覚えて、ともかくインゲン様をがっさり取り出して、おっきな鍋で塩茹で。
で、数分後ゆであがって、より鮮やかな緑をまとったインゲン様が私を見つめる。さぁ、これからどうしてくれる。変なことしたら承知しないよ。
頭の中でシュミレーションする。
一部は炊き込みご飯に、一部は胡麻和えに、一部は豚肉と炒めるか、、、。そりぁ、もう七変化どころか百変化ぐらいインゲン様が色んなものに変身してたよね。こんなに次から次へ出てくるなんて天才かもしれない。
しばらく己に寄ったあと、頭の中のものを現実にするために準備をはじめたんだけどさ、なんていうか、、、材料がなさすぎる。
インゲン様は大量にあるんだけどさ、私の家の冷蔵庫が貧弱すぎる。買い物いくのなんて、妄想デートしてたら、すっかり忘れてたし、仕事帰りに買ってきてと頼める旦那もいない。
この絶望的な冷蔵庫を前に、もういちどインゲン様を振り返る。なんとかしてあげないと、、、。
数分後涙をながしながら、塩茹でインゲン様を冷蔵庫にそっとしまう私。貧弱な冷蔵庫に緑の山ができて、冷蔵庫も心なしか嬉しそうだ。
私は静かにお湯を沸かしてカップラーメンを食べました。
ちなみに明日は3食ともインゲン様の予定です。草食動物並みにガツガツ喰らいたいと思います。そうしないと、インゲン様に恨まれそうなので。
ポッカリ空いた冷凍庫の隙間は、まさに今の私の心みたい。満たされぬこの思い。だれかに埋めてほしい。溢れてもいいから。
こんなことをしてたのが数時間前、。そして数分前、実家からインゲンを送るというメールが来て、数時間前の満たされたいという私の願望が無事叶いそう。
まぁ、なんていうか、もうインゲンにしか好かれない気がするよね。
では、サヨウナラ。