トラップ
突然だけどさ、私は目が悪い。
そりゃあもう裸眼なんかで過ごしたら、人の顔すら見分けられなくて、全然知らない人に知り合いのノリでマシンガントークしちゃったり、おばあちゃん並みに少しの段差でコケるわけ。
裸眼で過ごしたら、3日くらいで瀕死の状態になれる自信がある。いや、1日くらいで不審者がいるって完全に通報されちゃうよね。
そんな私の必須アイテムは、眼鏡かコンタクト。家では眼鏡。仕事はコンタクト。もうね、24時間目が要介護状態。
朝起きたらまずするのは眼鏡を探すこと。これをかけなきゃ1日が始まんない。で、今日は眼鏡がご機嫌ななめなのか、眼鏡が見つからない。私に嫌気がさしたのか、雲隠れ。
そりゃあ、たまには荒っぽく扱ったりしたこともあったけどさ、直接愛してるっていうのは恥ずかっただけだから、出ておいで、マイ眼鏡。なんて、気持ち悪い事を言いながら探すも出て来ず。
そんなしょうもない事をしてたら、出勤時間が迫ってきたから、仕方なく用意をはじめる。コンタクトはあんまり好きじゃないから、いつも始業直前のギリギリにしかつけない。
たまにはこのぼやっとした世界で過ごしてみるのも悪くない。
で、すごく久しぶりに裸眼で通勤わけ。朝の通勤電車は混んでて、今朝もまた大きな駅で満員に。そんななか、ついに来た気がした。私が待ち望んだ王子様ってヤツが。
たくさんの人に押されて私の前に立ったその男性はスタイル良し、服のセンスよし、いかにもできる男って感じのメンズ。
もうね、わざと私の前に立ったとしか思えないよね。他にも女性はたくさんいるのに、おっとっとーってな感じでわざとらしく私の前に来たもんね。
これはもういくしかないっしょ。膝と膝がたまにぶつかったりしちゃって、なかなかいい雰囲気。こんなドラマチックな出会いなんて滅多にな
い。朝の7時前からテンションMAXな私。
もっともっとあなたを知りたくて、眼鏡をおもむろにかける私、、、。さぁ、あなた、私にその姿をちゃんと見せてちょうだい。
眼鏡をまとった私が見たのは、、、。
ダボダボのスボンとしわくちゃのワイシャツ。私の前にやってきたのは毎日の仕事に疲れきって、私をお姫様抱っこもできそうにないか弱い王子様。
私は一筋の涙とともにそっと眼鏡を外すのでした。
裸眼は詐欺写並みに補正がかかるので、皆さんもお気をつけ下さい。